ところがその時のことです。
どこからともなく、白い服を着た火消しの集団が現れました。そして、みんなが大騒ぎしているのをしり目にして、瞬く間に火事を消し止めたではありませんか。
しかも、火事がおさまるのを見届けると、音もなくすうっと姿を消してしまいました。さて、その日のうちに火事の騒ぎを聞きつけて、あちらこちらの殿様が臼杵の殿様の屋敷に見舞いに訪れました。殿様たちの間では、火消しの集団の噂で持ちきりでした。
「あなたはいい家来をもたれて幸せですねえ。」
とほめてくれますが、臼杵の殿様はいっこうに心当たりがありません。
「えっ。は、はい。」
と返事はしたものの自分は首をかしげるばかりでした。
その晩、殿様は火事騒ぎに疲れてしまい、早めに休むことにしました。ところが、夜中近くになったときのことです。たくさんのきつねたちが殿様の枕元にたって、
「お殿様、お殿様。今日の火事を消すお手伝いをしたのは我々きつねたちです。いつぞやは、お殿様からお城をでていくように追い払われましたが、何とかお手伝いする機会がないかと、人目に付かないようにこの江戸の町にやってきていたのです。」
と言うではありませんか。殿様はハッと目を覚ますと、
「おお、わしの屋敷を守ってくれたのはお前たちだったのか。」
と感心するとともに、狩りの時にきつねたちを疑った自分の身勝手さを反省しまし。そして、さっそく、臼杵地方の白いきつねたちを、もとのようにお城に住み着くことを許すことにしました。それからというもの、白いきつねたちはいつまでも、いつまでも、臼杵のお城や殿様を守り続けたということです。
おしまい
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