ことさら暑かった夏も終わり、やっと鍋料理がおいしい季節になりました。鮨と並んで日本食の代名詞として世界中で知らない人はいない「すき焼き」。その歴史は比較的新しく、明治維新の頃といわれています。

 日本人が牛肉を食用として用いるようになったのは江戸時代末期から。それまで仏教の戒律で4本足の動物を食するのは禁じられていたのですが、南蛮人の渡来によって牛肉が食べられるようになりました。その後はキリシタンの弾圧とともに一時、牛肉を食することが禁じられ明治維新へと突入します。

 明治に入った日本は文明開化の時代を迎え、政府は牛肉食を積極的にすすめました。その背景には、福沢諭吉が「日本人が虚弱なのは肉を食べないからであり、肉は薬である」と述べ、牛肉食を奨励したことがあります。そのひと言で、日本人の体型が西洋人と比べて劣っているのは牛肉を食べないからだという考えが広まっていったのです。

 すき焼きの名前の由来は、”すき身にした牛肉を焼いて食べるから”という説と”農具で使う鋤(すき)を鍋代わりに使っていたから”という2つの説があります。
 長い間牛肉を食することを禁じられた日本人のとまどいが、”薄く切って煮込む”という調理法と、最も日本的な調味料である醤油との合体が「すき焼き」の誕生につながったのかもしれません。

《牛乳を隠し味にしたまろやか味のすき焼きの作り方》
材料/4人分

  • 牛ロース肉・・・・・・・320g
  • 牛あぶら身・・・・・・・少量
  • 白ネギ・・・・・・・・・3本(300g)
  • 焼き豆腐・・・・・・・・1個(200g)
  • 生椎茸・・・・・・・・・8枚(100g)
  • 春菊・・・・・・・・・・1束(200g)
  • しらたき・・・・・・・・1袋(200g)
  • にんじん・・・・・・・・1本(120g)
  • 油・・・・・・・・・・・大さじ1
  • しょうゆ・・・・・・・・130〜150cc
  • 牛乳・・・・・・・・・・大さじ3
  • 砂糖・・・・・・・・・・60g
  • 酒・・・・・・・・・・・大さじ2
  • だし汁・・・・・・・・・適宜
  • 卵・・・・・・・・・・・2個

下準備

  1. 牛肉は食べやすい大きさに切り、焼き豆腐はひと口大に切っておく。
  2. ネギは大きめのななめ切り、生椎茸は石づきを取り、そぎ切りにする。
  3. 春菊は根元を除いて3〜4センチの長さに切る。
  4. しらたきはさっと熱湯を通して食べやすい長さに切る。
  5. にんじんはささがきにする。

作り方

  1. すき焼き鍋を中火にかけ、十分熱してから油と牛あぶら身を溶かす。
  2. 肉を入れ、焦げ目が付いたら裏返し、牛乳を入れてしばらく煮る。
  3. 砂糖、しょうゆ、酒を入れる。
  4. 肉を鍋のふちに寄せ、にんじん、しらたきなどの材料を入れて強火にして煮る。
  5. 煮詰まったらだし汁、砂糖、しょうゆで味を整えながらいただく。

<おすすめ!>
*仕上げに、すき焼きの汁でうどんやお餅などを煮て食べてもおいしい。

 

11月  November  霜月
●二十四節気
8日 立冬
23日 小雪

●旬の味覚
魚介類・・・・カキ、なまこ、サバ、サンマ、サケ、マス  
野菜類・・・・白菜、里芋、さつま芋、カリフラワー、キャベツ、松茸、ぎんなん、小松菜、春菊、かぶ、大根
果物類・・・・みかん、柿、柚子

●行事
3日(水)   文化の日 
15日(月)   七五三
23日(火) 勤労感謝の日

参考文献 
参考文献 「グルメの哲学/丸山学芸図書刊」「わが家でつくる旬の味/西日本新聞刊」
「にほんのにほん/べルメゾン刊」「旬の食彩百景/時事通信社刊」