歴史的に今の日本料理の基礎が出来上がったのは、鎌倉・室町時代といわれています。室町以前も公家などの間では刀などで魚をさばいていたようですが、庶民にも包丁や鍋などが行き渡るようになったのは室町時代でした。その頃から魚を包丁でさばくなど、日本独自の調理法が生まれ、一般家庭でも日本料理の原形が確立したのです。
 この頃、公式料理をつくる作法を受け継いでいる一派として知られる四条流から「四条流包丁書」という包丁に関する作法の伝書が出ています。その流れの中で、日本式の礼法を整える過程で誕生したのが本膳料理でした。本膳料理は、約束ごとにのっとってつくられた料理を脚付きの角膳に並べたもの。位の高さやもてなしによって膳の数が増えたり、料理の品数が増えたりするのが特徴です。この本膳料理が、江戸時代になって約束ごとなどが緩やかになり、気楽にお酒を飲むための膳になったのが会席料理なのです。
 一方の懐石料理は、茶道の創始者である千利休が安土・桃山時代に茶道を確立していく中で、茶を美味しくいただくために作った料理。「懐石」の由来は、修業中の禅僧があたためた石を懐にいれて空腹をしのいだという逸話によるものです。
 このように会席料理は、お酒の席を楽しくする「宴」での料理のことで、懐石は茶を美味しくいただくための茶事の流れの中で生まれたお料理なのです。最近の料理店で良くみかける「和懐石」や「フランス懐石」の文字。茶事の流れの中で生まれた懐石料理とは、あまり関連がなさそう。小皿に盛られたお料理が一品ずつ供される、日本式のコース料理と理解するのが適当かもしれません。

※参考文献 「にほんのにほん/ベルメゾン刊」「にっぽん食物誌/講談社刊」