第6話「豊後の怪力男」
第3回



参考文献
「臼杵の歴史物語/藤澤勝美」

イラスト

 豊後の怪力男
 素手で作った土俵


 
「よし、分かりました。家来ども、すぐに大きな竹を一本庭に持ってまいれ。」と命じました。相撲とりたちは、何をするのだろうと顔を見合わせました。そして、

 「我々が望んでいるものは相撲ですよ」

と一番強そうな相撲取りが言うと、

 「ええ、いいですよ。何しろ、相撲の本場の大阪から来られたあなた方と相撲を取るとなれば、見物人で一杯になるでしょう。そこでこの竹で土俵を作ろうと思うのです。」というや、直径が20センチもあろうかという大きなもうそう竹を、何の道具も使わずに「バリッ、バリッ。」と手で二つに割っていくではありませんか。そして、竹の元とはしを結び合わせて、大きな輪を作ってしまいました。

 大阪へ出発
 
 イラスト「さあ、これで、土俵が出来ました。これから、相撲をとりましょう。」
というと、相撲取り達は目をぱちくりして、
「いや参りました。私たちはこれまで日本の各地を回って、地方の力自慢と相撲を取ってきましたがあなたのような力持ちに出会ったのは初めてです。」といって大隅守の屋敷を飛び出していったということです。

この大隅守が、ある時、大阪の方へ用事で出掛けることになって、船に乗り込みました。その頃の船は、大きな帆を張り風の力で進むようになっていたのですが、この帆を張るのには大きな力がいりますから、大勢の男の人手がいります。ところが、その日は人手がなくて、船長は困っていました。

 豊後の怪力男

 
イラストすると大隅守は
「それネら、オが一人で帆フ上げ下ろしをしてやろう。」といいました。乗り合わせた客達は、
「あなたがいくら力持ちでも、一人ではそんなことは出来ないでしょう。」
という間もなく、大隅守は次次と帆を上げていくではありませんか。乗客達はその力の強さにはびっくりするばかりでした。


 
こうして、何日かすると船は大阪の港に着きました。港では、新しく出来た船を港に下ろそうとして、五、六十人がかりで押していましたが船はびくともしません。この様子をじっと見ていた大隅守が、
「みなさん、そこをどいて下さい。わしが下ろしてあげましょう。」というものですから、みんなは大笑いをしました。それでも大隅守は知らんふりをして片手で船を押すと、ネと、「ギギギギ」という音と共に、船が海に向かって進むではありませんか。今度は両手で押すと「ギー。」という音をたてて、船は海に浮かんでしまいました。今度もまた、人々はびっくり仰天して
「あの男はまるで鬼か蛇か。とても、この世のものとは思えない。」
と言い合ったということです。

こうして大阪や京都などでも大隅守の力持ちの噂が広がって、

「豊後の怪力男」

といわれるほどにまでなったということです。

終わり