第28回 年中行事と食べ物「ほうちょう」
献立

 ほうちょうという麺料理がある。

 江戸時代の「西遊雑記」(1775)には大分市近郊で作られていたことが記されており、また、「喜遊笑覧」(1830)には大友宗麟公が客人に鮑(あわび)の腸を汁にして出そうとしたとき、鮑がなく小麦粉をこねて鮑の腸に似せて差し上げたとある。

 さらに、日田出身の農学者大蔵永常の「徳用食鑑」(1833)にも、豊後のほうちょうとして紹介されている。この書は、食べ物が不足したときの智恵が書かれているので、この頃には庶民の食べ物だったと思われる。
 「徳用食鑑」には、小麦粉を塩水でこねて細く引っ張りゆでた後、ちさなどをかやくに生醤油で食べるとある。

 ほうちょうも雍通公の江戸下屋敷でよく食べられていたし、側女中たちへも振る舞われたりした。

ほうちょうの写真

参考文献 臼杵の殿様暮らしと食(大分合同新聞社)