昭和23年

第六回


五月三十一日 月 晴
 
 日改作とにかく終了。それがまた二三行すまないうちに父さんはじめいろいろな手紙がついたので心乱れたから、よみ直しは明朝にゆづつた。少しでもあたまに翳りがあつてはならない。

  父さんからは森氏の家具のリストが来た。おもてに小応接と客間の家具。桜や楢で材料もよく、あの家には調和したもので、八万六千あまりになる。
 ただ応接の長椅子の一万は古びてバネのこわれているのを知つているから、父さんもさういつているが、私も高いとおもつた。それを除けて、他にリスト外の寐台をのために買ふ方がよいとおもつた。留守番の件は、これほどの家具をおいたままではやつぱり昼間の無人は危険であり、かた考へてやつぱり宮田夫妻 にきめた方がよいと決心する。

 その旨明日デンポオして貰ふ事を、煙突直しに来た望月の俊ちゃんに依頼。手紙も書いて速達にさせる。磯野さんの口入れの女はまだ都合不明であり、きまつても長くはダメとなれば、その間余分な手当てを出すより早く宮田二人にきめる方ケイザイ的にも都合よく、彼らなら学校とのかんけいで永続的になるし、男手の欲しい時は頼まれる便利もあり、一人女中のおこすヒステリの心配もなく、私たちが二人で長く留守になる場合でも安心なわけだし、余計な不安も生じない。

  ただ宮田の家内がどんな女であるかが不安であるが、こちらで親切に誠意を示せばなんとかやつて行かれるであらう。早く決心すべ[き]であつた。金次郎豊田氏に手紙、三枝子へも。
  四畳半のストーヴの煙突の手入れ完成。
  今日からほととぎす盛んに鳴く。
 
六月二十二日 火 晴時々曇

 
 筆変化なし。
  父さんから十八日附けのハガキで十七日に森家へ引っ越し、Y・Mをつれて夜行つて見て、十八日に一応部屋のセイリしたこと、大工 や水道の手配たのんだことしらせて来た。

  おいていく筈のカーテンをもつて行ったのでかけあふことも書いてある。
  加藤夫人からサトウ今日だけ配給としらせて来たので、午後丁度疲れ休めのためもあり行つて取つて来る。
 安東氏に逢ひ、林さんの山荘買ひ入れの件、加藤売店との交渉を依頼する。  

 

 


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